

入札ってどんなものがあるの?

そもそも入札ってするべき?

入札の種類や流れについて見ていきましょう

入札とは?
入札とは?
官公庁(国や地方公共団体)と民間企業が公正な契約を結ぶためのしくみです。
官公庁が公共工事を依頼するときには、原則入札が行われます。

たとえば、
・河川の堤防の強化やダムの建設
・公園や緑地の整備
公共工事を依頼するときになぜわざわざ入札をするのでしょうか?
それは、行政と企業が健全な距離を保つためです。

税金を使って公共工事を行うので、透明性や公平性が求められます。
国や地方公共団体が特定の民間企業にばかり、仕事を依頼していたら怪しいですよね。
入札を狙うべき理由
入札は準備が大変です。
決算が終了した後の経営状況分析、経営事項審査、入札参加資格登録の手続きに始まり、落札した後もたくさんの書類を作成しなければなりません。
では、そこまでして公共工事を狙う意味はあるのでしょうか?
私は「今後大きく利益を上げるため」に必要だと考えています。
経営は目先の利益より、長期的に利益をどう安定させるかです。
たとえば、スポーツ選手が引退後のことを考えず、入ってきたお金をジャバジャバ使ってしまっては、将来お金で苦しむかもしれません。
しかし、将来のことも考えて不動産などに投資をしていれば、引退後も安定してお金が入ってきます。

長期的な利益の安定のことを考えて、戦略的に「入札」を活用する必要があります。
具体的には、入札においては利益ではなく、信頼関係の構築を目的とすべきだと思っています。
たとえば、自分が落札した際に他社に仕事を振ることで、次回その会社が落札した際に自分に仕事を振り返してもらう、というゆるい協力関係を築く。

一方的に利益を受け取る企業とは距離を置き、信頼できる企業と協力関係を作ります。
このような関係が複数あれば公共工事の参入できる機会が増え、実績を積むことで大規模工事にも挑戦できます。
入札を長期的な経営戦略として活用できれば、安定した利益と成長を目指しやすくなります。
業種によって入札は異なる
『どの業種で』入札に参加するかはきわめて重要です。
たとえば、建築の入札は金額も大きいですが、規模もデカい。学校やトンネルの建築となればゼネコンさん以外は難しいでしょう。

奈良県の中小企業であれば土木、舗装、造園は狙い目です。200万円くらいの工事からあります。(土木や造園の許可を持っていれば『除草』に入れます)
入札の種類
入札には大きく分けて3つの種類があります。
・指名競争入札
・随意契約
順番に見ていきましょう。
一般競争入札
最も基本的なのが「一般競争入札」です。参加した企業のうち、『最も有利な条件』を提示したところと契約します。
入札資格さえ取得していれば、誰でも参加できます。
『最も有利な条件』には2つの判断方法があります。
価格競争方式
「最も低い金額を提示した事業者」が選ばれます。シンプルですね。

この方式ですと「100円」のように極端に低い金額を提示しても選ばれてしまいます。あまりに安いと依頼する側も不安ですよね。
「最新iPhoneがなんと100円です!」と言われても、怪しさしかありません。
そのため、一般的に入札価格には下限が設けられています。
たとえば下限が400万円だった場合、先ほどの例だと、A、B社は失格で、C社が選ばれます。

もし、下限の金額を提示した事業者が複数あった場合は「クジ引き」で決めます。結局最後は運なんですね。
東大阪市では下限が非公開になっており、予測して入札をする必要があります。
総合評価落札方式
価格だけでなく、品質性や安全性などの要素も含めて選びます。
「最低基準価格+評価値(価格以外の要素を点数化したもの)」
で、一番点数が高い企業が落札です。

一般競争入札は、多くの企業が参加できるため競争率は高く、落札までつながらないことが多くあります。
また、落札するために安い価格で入札するのであまり利益が出ないことも...
ですが、条件に当てはまってさえいれば誰でも参加できるので、実績を積み上げていけるチャンスです。
指名競争入札
指名競争入札は、官公庁から指名された複数の企業の中から最も有利な条件を提示した事業者と契約します。
選抜してから競争ってイメージですね。

「え、それって全然公平じゃない!」
そうなんです。指名競争入札は先ほどの一般競争入札と比べて誰にでもチャンスがあるわけではありません。
以前は指名競争入札が主流でした。
しかし、談合が起きやすいことや、官公庁による独断的な指名が行われやすいことから、最近では実施される割合が減っています。

ただ、自治体によってはほとんどの入札が指名競争入札であるところもあります。
たとえば広陵町などは指名競争入札が基本です。
また、奈良県の工事は一般競争入札が多いですが、除草は指名競争入札が多いなど業種によって異なる場合もあります。
・契約の性質や目的、一般入札に適していない場合
・契約の性質や目的上、競争する業者が少なく、一般競争入札にする必要がない場合
・検査が困難な特殊な案件
・不誠実な企業の参加を避ける場合
指名の基準は、企業の経営規模、信用状況、過去の実績などが考慮されるのが一般的です。
指名を受けた後は、一般競争入札と同じで、価格競争方式と総合評価落札方式で決めます。
価格競争入札方式は、一般競争と同様に、あらかじめ最低落札価格が公表されていることも多く、結果的にクジで決定することになります。

随意契約
『競争なしに』発注者側が特定の事業者を選んで契約を結ぶ方式です。
たとえば、奈良市から「この草刈工事だといくらでできますか?」と事業者に直接連絡があり、見積もりを出して契約を結びます。

完全に公平性が失われていますが、実は仕方のない部分もあります。
「学校の水道管が壊れたから急いで修繕してほしい!」ってときにのんきに入札してはいられません。
随意契約には3種類があります。
・少額随意契約
・不落随意契約
特命随意契約
高い技術力が必要で特定の企業でなければ施工が難しい場合に結ばれます。

少額随意契約
契約の予定額が少額である場合、二社以上から見積もりを取り、契約先を選定する方式です。
県や市役所などの契約手続きの中でも1番多い契約方式なので、直接依頼してもらえる機会も多くあります。
不落随意契約
入札案件に対し、参加企業がいない場合や落札企業が契約を結ばなかった場合は、最低価格で入札した他の企業と随意契約ができます。

随意契約を取るポイント
随意契約は、県や市役所などの発注者との過去の取引実績などが重視されて声がかかります。入札に参加したばかりの会社に声がかかることは基本的にはありません。
まずは何としても一般競争入札で落札することを目指しましょう。
公共工事に入れると、県や市の担当者とも話をする機会が増えます。自社をアピールする絶好の機会です。
その際に、発注担当者との信頼関係をしっかりと構築しておきます。

発注者側からしても関係が築けている人にお願いしやすいので、随意契約で発注してもらいやすくなります。
技術力も大事ですが、それよりも大切なのは発注担当者との信頼関係です。
入札の流れ
続いて入札の全体的な流れを見ていきましょう。
①入札参加資格取得する
②入札案件を探す
③入札する
④落札&契約
⓪参加前の準備をする
入札に参加する前に、準備しておかなければいけないことがあります。
◆ 建設業許可を取得する
建設業許可は500万円未満の工事を行うのであれば必要ありません。
ですが、公共工事の入札に参加する際には、どのような規模の工事であっても許可が必要です。
建設業許可を持っていない場合は取得することから始めましょう。
◆ 経営事項審査を受ける
経営事項審査とは、その年の会社の決算書をもとに会社の経営状態を点数化することです。
入札に参加する会社は、毎年の決算の終了後に受けなければなりません。
この結果を受けて、自治体などの発注者側はランク付けを行い、落札者を決める材料にするわけです。

大きな準備はこの2つで、あと気を付けてほしいことは「税金を滞納しないこと」
これらができていれば入札に参加する準備は完了です。
①入札参加資格取得する
実際に工事を行う自治体に、入札参加資格審査申請を行います。
国の機関や地方自治体ごとに申請方法が大きく変わるので注意です。
特に気を付けたいのが、受付時期・受付期間。
常時、受けつけている自治体もありますが、1,2年に一度しか受け付けていない自治体も多くあります。逃すとその後の入札に参加できません。

②入札案件を探す
入札案件は、官公庁が情報発信をしています。
参加したい行政機関のHPから案件を探しましょう。
③入札する
入札価格を決めます。説明会の内容を考慮しながら決定します。
落札しようと価格を下げることで、利益がほとんど出なくなる場合もあるので注意です。
④落札&契約
官公庁と落札した事業者とで契約を結びます。事前に提示された内容に従って契約が行われます。
まとめ
入札は、官公庁と民間企業が公正な契約を結ぶためのしくみです。
「一般競争入札」「指名競争入札」「随意契約」の3つの種類があります。特に随意契約では、発注担当者との信頼関係を築くことがポイントです。
入札を単なる価格競争として捉えるのではなく、『信頼できる協力関係の構築』や『実績の積み上げ』として活用することで、企業の成長と安定した利益につなげられます。
入札を効果的に活用し、戦略的な経営を目指しましょう。